1. 「Domino 2026」「Notes 2026」という新しい呼び方
今回から、製品名に「年号ラベル(マーケティングモニカー)」が付くことになりました。
- 製品名の例
- HCL Domino 2026
- HCL Notes 2026
- (内部的なバージョン番号は)14.5.1
ポイントは次の通りです。
- 製品名は変わらない
Domino / Notes / Traveler / Verse といった製品名自体はそのまま。
- バージョン番号も継続
「14.5.1」のような従来のバージョン番号は、サポート・ライセンス管理のために引き続き使用。
- 「2026」はラベル(タグ)という位置づけ
製品の世代感(どのくらい新しいか)を、ユーザーや経営層に説明しやすくするためのタグ。
頻繁にリリースされる製品(例:Nomad)では、「Nomad 2026.03(2026年3月版)」のように、年号+月を付ける方針も示されています。
2. Domino サーバー側の主なアップデート
2-1. コンポーネントの更新とコンテナ対応
Domino 2026 / 14.5.1 では、サーバー内部の各種コンポーネントが更新されています。
- Java セキュリティアップデートの取り込み
- Apache Tika の最新版化
- curl ライブラリの更新
- OpenSSL 3.5.2 への更新(FIPS 140-3 認証セキュリティプロバイダ対応)
- Domino コンテナのベース OS を Red Hat UBI 10 に更新
特に、FIPS 対応や UBI 10 ベースのイメージは、規制要件やセキュリティ基準が厳しい環境での利用を意識したものといえます。
2-2. Domino IQ 関連の強化
AI 連携機能である Domino IQ にも、いくつかの重要な更新が行われています。
Domino IQ の統計情報の追加
- Domino IQ のバックエンドがどの程度利用されているかを把握するための統計項目が追加。
- リクエスト件数や処理時間などが、約 5 分間隔で更新され、キャパシティ計画などに活用可能。
RAG(Retrieval Augmented Generation)は EA2 に延期
- 「Domino IQ + Domino データベース全体に対する RAG クエリ」という大きなトピックは、Early Access 2(2026年1月予定) にスケジュールを移動。
- 今回の EA1 では、RAG 自体はまだ提供されませんが、その前提となる周辺機能が整備されています。
ガードモデル(Guard Model)対応
- Domino IQ に ガードモデル を設定できるようになりました。
- プロンプト(入力)に対するプロンプトインジェクション的な攻撃や不適切な要求の検知
- 応答(出力)に含まれる望ましくない表現やセンシティブな内容のフィルタリング
- Domino IQ の構成 DB(IQ システム DB)で「Large Language Model」か「Guard Model」かを選択し、サーバー設定側で Guard Model を指定することで有効化します。
- ガードモデルは AI 業界全体が発展途上の技術であり、万能ではないことも明言されています。性能への影響も含め、検証結果のフィードバックが求められています。
2-3. 開発者向け:LotusScript JSON パーサーの拡張
Domino 14 系で導入された LotusScript JSON パーサー に対し、JSON オブジェクト間で値・要素をコピーしやすくする拡張が行われました。
これにより、
- 受け取った JSON の一部を別の JSON に転記する
- サブオブジェクトを組み立てて別オブジェクトに統合する
といった処理が、より自然に記述できるようになります。
2-4. 添付インデックス(Tika)の統計情報
- 添付ファイルインデックスに利用している Apache Tika に関連し、データベース単位でインデックス状況を把握するための統計出力が追加。
- Notes.ini に debug プレフィックス付きの変数を設定することで有効化。
添付全文検索への依存度が高い環境では、性能チューニングやトラブルシュート時に役立つ機能です。
3. セキュリティ機能の拡充
3-1. パスキー(Passkeys)の自己管理
Domino 14.0 で導入されたパスワードレス認証方式 Passkeys に対して、ユーザー自身がブラウザからパスキーを管理できる UI が追加されました。
- ログイン画面から「Passkeys を管理」といったオプションを選択
- ログイン後、自分のアカウントに紐づくパスキーの一覧を確認・削除可能
- 紛失した端末に紐づくパスキーを削除する、といった使い方が想定されています。
- すべてのパスキーを削除してログイン不能になることを防ぐため、最低 1 つは残す仕様です。
現時点ではログイン画面からのみアクセスできる UI ですが、今後はより自然な導線に改善されていく予定とのことです。
3-2. ClamAV との連携によるアンチウイルススキャン
オープンソースのアンチウイルスエンジン ClamAV と連携したウイルススキャンがサポートされます。
- Domino 12.0.2 で追加された IAP プロトコル連携に加え、ClamAV プロトコル を使って ClamAV と直接連携可能に。
- Domino サーバーと同一ホスト上で ClamAV を動かす構成にも対応。
- 別サーバー上の ClamAV を利用することも可能。
- ClamAV 本体は OS レベルに別途インストールが必要です。
Domino 側の設定は、ccamcfg.nsf で行い、ClamAV を利用するかどうか、ウイルス検知時の挙動(隔離・拒否・通知など)を指定します。
コスト効率の高いアンチウイルス構成 を Domino 上で実現しやすくなる点は、多くの環境で歓迎されそうです。
4. Notes クライアントのモダナイズ
「Notes クライアントが古く見える」という声に対し、HCL は今回のリリースでかなり踏み込んだ UI リフレッシュを行っています。
4-1. HCL Enchanted デザインシステムの採用
- Notes クライアント全体に、HCL のデザインシステム "HCL Enchanted" を適用。
- 上部ツールバーアイコンの刷新・スリム化
- 左側の Open ペインのレイアウト調整
- アクションバーの色とスタイルを統一
- カラーはアクセシビリティ要件(コントラスト、拡大表示、スクリーンリーダー)を満たすよう設計。
- 同じデザイン思想が Verse / Nomad / Sametime などにも順次展開される予定です。
4-2. カレンダー・フォーム・ダイアログ類の刷新
- カレンダーの色・アイコンを刷新し、視認性とモダンな外観を両立。
- メールテンプレートをはじめ、標準テンプレートのフォーム類を再デザイン。
- 検索ダイアログやビュー内のクイック検索など、ダイアログも順次 Web ベースの UI に置き換え中。
既存アプリケーションの見え方も、基底コンポーネントの更新により「少し新しく見える」ようになっていきます。
4-3. 環境設定ダイアログの全面リニューアル
特に印象的なのが、環境設定ダイアログの大幅刷新 です。
- 左側に大分類、右側に詳細設定という 2 カラム構成。
- 左ペインは項目を絞り込み、サブメニューを展開する形に整理。
- 右側はページごとにレイアウト・スタイルを統一し、旧来の「画面ごとにバラバラだった UI」を整理。
- 上部には「テキストフィルタ」があり、キーワード検索で項目を素早く絞り込み可能。
「Notes の設定画面が古臭くてわかりづらい」という印象をかなり払拭できる UI になっています。
4-4. ワークスペースとプロパティパネル
- ワークスペースでは、すべてのアイコンを 同一サイズ に揃える大胆な決断。
- 小さなアイコンの NSF は拡大表示されるため、古いアイコンはやや粗く見える場合もありますが、設定で「古いアイコンを拡大しない」「枠線を表示する」などの切り替えが可能です。
- 右側に「プロパティパネル」を固定表示し、選択中の文書/ビュー/データベース/ワークスペースのプロパティを一元表示。
- Figma や他の IDE と同様、「右側にプロパティ」という現代的な UI パターンを踏襲。
- 色選択などの UI も、Nomad などで使われている新しいコンポーネントに更新。
現時点の EA1 では、Designer クライアントを同居インストールした環境ではこの新プロパティパネルは表示されない 仕様になっています。
4-5. コア UI コントロールとフォント
- ラジオボタン/チェックボックス/タブ/リストなど、Lotus Notes の基本 UI コンポーネントが新しいスタイルに。
- 標準フォントとして、Google フォントの Inter を採用。現代的かつ読みやすい印象を与えます。
4-6. Windows クライアントのインストール高速化
- これまでの Windows 版インストーラーは各ファイルを個別に展開・登録する方式で、環境によっては 15 分以上かかることもありました。
- Domino 2026 では、Mac 版と同様の「事前展開イメージ」方式 を Windows にも採用。
- ビルド時に HCL 側でインストール済みイメージを作成し、それを圧縮して配布。
- クライアント側では圧縮イメージを展開するだけなので、単体の Notes クライアントで 2~3 分程度 を目標としたインストール時間に。
- Designer / Administrator を含むフルクライアントはもう少し時間がかかりますが、それでも大幅な短縮が期待できます。
5. Sametime との連携強化:Web ベースチャットの埋め込み
Notes 2026 では、Sametime の Web クライアントを Notes クライアントに統合 するオプションが提供されます。
- Notes クライアント内に、Web ベースのチャット UI をそのまま埋め込み。
- これにより、従来 Notes からは利用できなかった機能にも対応。
- メッセージの編集・削除
- リアクション
- リードレシート(既読確認)
- 将来的にはチャネル(チャンネル)機能への対応も計画
- 利用には Sametime 12.0.4 / Sametime 2026 が必要。
- 管理者は、デスクトップポリシーや Sametime ポリシーなどで、従来の Eclipse ベースの埋め込みクライアントを使うか、新しい Web ベースチャットを使うかを選択・強制できます。
Notes ユーザーからの「チャットの編集や削除をしたい」という長年の要望に対する、実質的な回答と言えるアップデートです。
6. 早期アクセスプログラムへの参加方法とスケジュール
6-1. 入手条件
- Domino / Notes のサブスクリプション・サポート契約(S&S)が有効なお客様は、ダウンロードポータル上に「Domino Early Access Program」のアイコンが表示されます。
- そこから Domino / Notes / Traveler 14.5.1(Domino 2026)をダウンロード可能になります。
6-2. スケジュール(ウェビナー時点の計画)
- Early Access 1(EA1)
2025年11月25日 公開予定
- Early Access 2(EA2)
2026年1月頃を予定(Domino IQ の RAG 機能などが含まれる見込み)
- 正式リリース(EGA)
2026年3月リリースを目標
すべて「現時点の計画」であり、今後変更される可能性があることが明言されています。
6-3. フィードバックの方法
- 早期アクセスの参加者は、専用フォーラムでの質疑・意見交換、バグ報告、Aha! ポータルを通じた機能改善アイデアの投稿といった形で、開発チーム・プロダクトマネージャーに直接フィードバックできます。
- HCL 側も「短いサイクルでの EA → 正式版」を前提にしており、素早い検証とフィードバック が強く求められています。
7. ノーツコンソーシアムとしての視点
今回の Domino / Notes 2026 Early Access では、
- Notes クライアントの UI リフレッシュとアクセシビリティ対応
- Domino IQ を軸とした AI 連携基盤の強化(統計、ガードモデル、今後の RAG)
- ClamAV 連携による、コスト効率の良いアンチウイルス構成
- Passkeys によるパスワードレス認証の整備
といった、「モダナイズ」と「セキュリティ」と「AI」 の3つの軸での進化が見て取れます。
Notes / Domino は「古いシステム」というイメージで語られがちですが、今回の Domino 2026 では、「見た目」「中身」ともに、現行の IT 環境にきちんとフィットするよう再設計とアップデートが進んでいることが伝わってきます。
ノーツコンソーシアムとしても、今後のイベントやユーザー情報交換会の場で、Domino 2026 / Notes 2026 の評価や活用事例を会員のみなさまと共有していく予定です。